Dome Lab Journal #001
なぜ60歳を過ぎて、再びドームを学び始めたのか
私が最初にフラードームの話を聞いたのは、FabAcademyに参加するよりも前のことでした。
建築工房藁の杉山さんから、バックミンスター・フラーとジオデシックドームの話を聞いたのが始まりです。
その時、同時に紹介されたのがSketchUpという3D CADでした。
私は長年、大工として建築に携わってきました。
木を刻み、組み、空間をつくる仕事です。
しかしSketchUpの画面の中では、空間はXYZという三つの軸によって表現されていました。
一本の線が面になり、
面が立体になり、
立体が空間になる。
それは単なるCADソフトではなく、まるで新しい言語のように感じられました。
自然界の形や構造が、数学や幾何学によって表現されている。
そんな世界への入口が、私にとってのSketchUpでした。

私がフラードームに惹かれた理由も、そこにあります。
ドームの形が面白かったからではありません。
細い材料で大きな空間をつくることができる。
間伐材のような身近な材料も活用できる。
構造的に合理的で、美しい。
そして地震にも強い。
そこには「安全」と「安心」を両立させる住まいの可能性がありました。
さらに、その背景にはバックミンスター・フラーの思想があります。
私は建築だけでなく、その思想そのものにも興味を持つようになりました。
それから長い年月が流れました。
大工として働き、
工務店を経営し、
北海道へ移住し、
森づくりやアイヌ文化を学び、
そして不動産業を始めました。
振り返ってみると、そのすべてが「住まいとは何か」を探る旅だったように思います。
そして今、私は再びドームを学び始めています。
理由は三つあります。
一つ目は、自分自身の探究を整理したくなったこと。
二つ目は、知人から「ドームを作りたい」という相談を受けたこと。
そして三つ目は、AIの進化です。
若い頃には理解できなかったフラーの思想やシナジェティクスの世界を、今なら違う角度から読み解けるのではないか。
そんな期待があります。
AIは答えを与えてくれる存在ではありません。
しかし、複雑な概念を整理し、新しい視点を与えてくれる存在にはなり得ます。
私はその可能性を感じています。
ドームは私にとって、ひとつの建築ではありません。
未来の住まいを考えるための入口なのです。
Dome Labでは、
フラードーム、
シナジェティクス、
CNC、
BIM、
AI、
そして住まいOS構想まで、
さまざまなテーマを横断しながら探究を続けていきます。
この記録が、誰かの新しい発見や挑戦につながれば嬉しく思います。
2026年6月
木村 浩昭
